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「一、二、三、死、今日を生きよう! 成田参拝」笙野頼子
キョートット出版

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キョートットの本

以下、小川てつオの「感想世界」よりシェアブログ1152に投稿
最近の関心事は、私有地とか公共地とか、の土地の所有の問題。この本は、それに触れてそうだから、借りた。
笙野頼子は以前から気にしてはいたけど、なんとなく読めない文体だった。この本も最初のあまり有効とは思えない言葉遊びにひっかかり、もどかしく、読めなかったが、「語、録、7、8、苦を超えて行こう」から読んだら、すごい、と思った。欝と躁のブレンドが絶妙なのだ。狂いながら醒めて醒めながら狂って生きていく、感じがする。ぼくには、死ぬなら狂い死にしたい、それよりも狂い生きしたいという熱望のようなものがあるが、ここでの文章はかなり理想に近い。目に入った文章をいくつか。「埋没することと客観化することの両方が手放せないのである。」ああ、難しいな。読んでしまう。この本もう一回読んでから書くか。

吉増剛造に、リズムの魔、という言葉があった。絶頂期の吉増剛造を思い出す部分があった。リズムの魔があるのである。本書のどこかで、現代詩出身だと誤解されるが自分はそうではない、と書いていたが、しかし、これは、やはり最良の現代詩ではないかとも思った。
ちがいは、身辺のリアリズムから離れまいとする強い意志か。自分の視点、自分の生活、そこから踏み出すのは配慮をもって。そんな作者が、ネコのようにそろそろと、成田に近付く。まだ、3農家が残っていて空港に反対しているということをぼくは知らなかった。
「例えば、普通の滑走路を作ろうとすると、少人数でも農民がそこには残っている。ゆえに、その土地に作ることが出来ず、滑走路は通常より二千百八十メートルと短い。また闘争本部があるというので、誘導路(どういうものか私はよく分からない)もへの字に曲がっている。寸たらずへ曲がり、出来てみるとなぜか、そこに居座っている人がわがままで邪魔をしているかのように一瞬は見える。しかしそれは違う。要するに、人の家すれすれのところにわざと厭味のようにへの字のや短いのを拵えたのだ。」
そういうことはよくあることの気がする。テント村でも。

「自分が地上げされる側、という意識はそういえばなぜかなかったのだ。というか災難を潜り続けながら地上げという言葉に実感がない。でもその一端を、取材することに私は熱心だ。見えなくされる側、黙らされる側、圧倒的既成事実の前に脱力する側。常識や筋道を語れば納得出来るような簡単な事をたちまち押し流して来る大きな力によって、黙殺される側についての一部始終を。」
これを書き写しながら、やはりテント村を思い出し、そして、自分が押し流す側であることもある(そういう非難されることもある)ということを思い出す。

「所有とは、意識の緊張を強いるものなのだ。その意識の緊張が自我の起源であり、内面の、個の、起源なのだ。律令制が崩れて土地の集積が始まってからずっと、日本人はそのシステムの中にいた。持たざるものさえも地主になる可能性を持つという点では、所有という意識から逃れられないのだ。」
「その小さな家は「私の」領土であった。また猫と私が暮らす「みんなの」聖域であった。」
「共産主義の挫折とは理論の挫折には思えなかった。むしろ誤適用の問題に思えた。土地所有と宗教をその誤適用ではクリアできない。」
ここらへんが、土地についてもこの本の中での考察だけど、なるほどと思うが、すこし物足りなさもある。自我と所有が直結していると結論できるのかな、とそこは考えたいと思う。
他の本は読んでないけど、この人の最高傑作ではないかと思う。たぶん。これから、もっとすごくなるかもしれない。好きなところ少し。

「いつものように寝入りばなに言葉が降ってきた。降るというよりそれはまさに頭悪い教祖的な言葉の見つけ方だった。「来る、言葉が、来る、言葉が、来る」という漢字で意図的に待っていたせいでその言葉は来た。異常に頭悪そうな、本当にインチキ霊能の来方で来た言葉だった。意識の皮一枚下にあるだけみたいなみえみえだった。そういう来方で降ってきた言葉は初めてだったし、とっさに扱い方も判らないほど幼稚なフレーズだったし。でも、夢の中で、太い、下品なおばさんの声がこう言ったのだ。
モリナガが、くるぞよ。」

「仏の二の腕は体毛がなく筋肉が落ちていた。輝クー!アイドルに会った無神経な人のように、私は手を打って仏に叫んだ。輝クー!ムナシー!」

* もう一度読み返すとしたら、他者の問題に立ち入る際のもどかしさ、自分の問題との接点の見つけ方という点で読み返したいと思った。


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