(五月に。)

8月21日朝、父が永眠しました。78才でした。
最期はおだやかな顔でした。

去年、実家に帰った折、父がこんなのどうだい?と原稿用紙一枚持ってきました。
二十才ころ書いた詩だといいます。

 

(五月に。)

午前。
びょうびょうと野に霞たち
木立は淡く陽炎かげろうにもえて
―­­傷心の愁いはそこはかなとおぼろげだった

昼。
土堤つつみ幼児等おさなごら 転がり遊び
仔犬 ともに戯れて
―胸の痛みは遥か去ったかであった

午後。
静洌せいれいな河を
ポンポン船がさかのぼり、
その軽妙なテンポは
物懶ものうい理論を嘲笑って 遠ざかっていった