いちむらみさこさん責任編集「エトセトラ」VOL.7のこと

キョートット出版刊行『Dearキクチさん、ブルーテント村とチョコレート』の著者、いちむらみさこさん。都内の公園のブルーテント村に2003年から住み、そこで物々交換カフェ「エノアール」を小川てつオさんと運営したり、女性ホームレスグループ「ノラ」を主宰したり。ジェンダーや貧困など、社会的排除の問題と向き合うアクティビストであり、アーティストです。

さて、みさこさんが責任編集を務めた「エトセトラ」VOL.7(エトセトラブックス 2022年5月23日発行)が、大きな反響を呼んでいます。

特集名は「くぐりぬけて見つけた場所」。

生き延びるために、居場所をつくり、抵抗し、ケアし、知恵をわけあう。それぞれの工夫や表現で生きる女性たちの、パワフルかつ繊細な声が誌面に溢れ、圧巻の号となっています。
◆エトセトラブックス 書誌ページ https://etcbooks.co.jp/book/etcvol7/

中でも強い衝撃を与える記事が、「ノートの中に見つけた場所 『小山さんノート』ワークショップ」です。

小山さんは、みさこさんと同じテント村に暮らし、2013年の末に亡くなりました。彼女が遺した手書きのノートを前に、みさこさんが文字起こしをしようと呼びかけ、始まったワークショップ。ワークショップメンバーのひとりひとりが小山さんのノートと向き合い、そこから生まれた切実な思いが、この号では綴られています。

小山さんはなぜ、何十冊ものノートに言葉を刻み続けたのか。藤本なほ子さんは次のようにいいます。

――誰かに何かを伝えるためではなく、まずはただ、そこに居つづけるために書かれなければならない言葉がある。小山さんのノートの言葉は、そのような切迫したものだったのだと思う。(p.17「ノートという場所」より)

 
「スクウォット・インタビュー」では、みさこさんはサンパウロやベルリンの女性たちに話を聞きます。スクウォット(空きビルや空いた土地の占拠運動)を行って居住の権利を訴える運動家/スクウォット・コミュニティへのインタビューを通して、それぞれの都市での運動の報告と、運動を継続するためのアイデア、連帯のための知恵などが豊かにシェアされています。

「編集長フェミ日記」のコーナーでは、居場所を育むための日々のいとなみや思いが、みさこさんの飾らない言葉で記されていました。たとえば「4月7日」は・・・

――ホームレス女性たちのための集まり、ノラごはんの日。(中略)最近、ノラのひとりが路上で暴行を受けたということがあって、それを聞いた他のメンバーが、被害を受けたメンバーを励ますため、食べ物を持ち寄って緊急ノラの会を開いたのが三週間前。そして今日、被害を受けたメンバーがみんなへのお礼のため差し入れをしてくれた。うれしくておいしい。(p.81)

「うれしくておいしい」という言葉の、何としみじみと、豊かなことか。

みさこさんによる特集のあとがきは、全文が公開されています。ぜひお読みください。
https://etcbooks.co.jp/news_magazine/etc7owarini/

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「エトセトラ」では毎号、充実した特集が組まれていますね。生き生きとしたフェミニズムの諸相を知ることで、自分の日常が捉え直される気がします。私はひとりではないんだ、ということを感じ取ることができる。だから、読んでいて、元気が出る。その元気とは、「公園で温かい飲み物とおにぎりを食べて元気を取り戻す」(「編集長フェミ日記」3月9日より)のような、しみじみと腹の底から湧き出る元気だなあ、と感じます。(M)