『ホームレス文化』は猫本か?

新刊『ホームレス文化』の著者・小川てつオさんは、東京の公園のテント村で黒猫のキックちゃんと暮らしています。カバー袖のプロフィール写真では、著者に抱っこされたキックちゃんが、こちらをじっと見つめています(撮影:いちむらみさこさん)。

実は⋯⋯『ホームレス文化』は“隠れ猫本”でもあるのです!

帯や本の中に、テント村の猫たちの姿がチラホラ(絵も小川さん)。「猫自慢」「猫が木から降りない」「猫小屋」「猫股」など、猫が主役の記事もあります。公園近隣に住む<猫おばさん>ことタマさんがテント村の猫たちを気にかけ、サポートする様子なども登場。猫と人とが織りなす暮らしが生き生きと立ち上がります。

ところで、本づくりも大詰めだった頃。
小川さんとは主に夜間、LINEのスピーカー通話で長く話し込むことが多かったのですが、時折キックちゃんの「ギャオーン!!」という雄叫びが響き、びっくりすることが何度もありました(キックちゃんはよく鳴く猫、と本にもあります)。

京都・西陣のキョートット出版には、猫メンバーが3名いますが、そんな時はきまってルキが、澄んだ声で「ニャー」と答えます。

人間たちのやりとりに猫たちの声が重なって⋯⋯空間を超え、重層的な交信が生まれていたのでした。

『ホームレス文化』は2025年9月3日に<出港>し、3か月が経ちました。豊かな出会いを重ねつつ、ゆっくりと航海を続けています。

本がひとり立ちしたように感じる今、猫たちの声が行き交った夜のことをじんわり思い出します。🌙(M)