いちむらみさこさんと「ウォ~!」

 2003年から都内の公園に暮らし、『Dearキクチさん』の著者でもあるアーティスト、いちむらみさこさんのトークイベントが、この夏ふたつありました。

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「越境」展アーティストトーク「隔絶、それでも生の際で:ジェントリフィケーションとアート」(京都精華大学、7月15日)

エトセトラ・トーク第6回「くぐりぬけて場所を見つけるために、ここで語ろう」(いちむらみさこ責任編集『エトセトラVOL.7 特集=くぐりぬけて見つけた場所』トークイベント、7月31日)
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 ふたつのトークに共通するキーワードは「居場所」。あらゆる場所が管理とお金儲けのシステムに組みこまれ、無料でいられる場所がなくなってきている。「再開発」で貧困層の住まいや居場所が奪われるジェントリフィケーションも各地で進んでいる。しかもそこに「アート」が利用されてしまっている・・・。

 精華大でのトークは、そんな排除の状況に対する、みさこさんのこれまでの抵抗の表現を伝える内容でした。たとえば「246キッチン」。公園や路上でご飯を作り、通行人も一緒に食べる「ライブ」です。トーク会場のスクリーンに、みさこさんが鍋の蓋とお玉を持ってウォ~!みたいに叫んでいる「ラーメンライブ」の写真が映写された時は、私も思わずウォ~!と叫びたくなりました。生きているということが、掻き立てられる気がしたのです。状況に楔を打ち込み、こじあけ、可視化するその表現は、食べる場所・寝る場所・つながる場所を取り戻すための、根源的な問いを突きつけます。

 エトセトラ・トークでは場を作ることをテーマに、公園のテント村での暮らしや、主宰するホームレス女性のグループ「ノラ」のことが語られました。「自由や安全は自分たちで作っていくしかない状況」「コンフリクト(衝突)は必ず起きる。それをないことにしない。難しくてもひたすら話し合いを重ねたい」「自分のマジョリティ―性を問い続ける」「みんな孤独だけど、ひとりぼっちじゃないと言いたい」――それらの言葉は火種のように、私の胸にも残り続けています。(M)