『つながる読書』、読みました!
前エントリーで紹介の、小池陽慈編『つながる読書 10代に推したいこの一冊』(ちくまプリマー新書)を読みました!(K)
執筆者14人、一人ひとりが一冊の本をレコメンドするのですが、それが面白く、皆さん本気で勧めてくる。うん、うん、とうなずく。(何か、レスをしたくなるかんじで。で、実際に本には別の執筆者からのレスが載っていて‥‥)。
それで、レコメンドされてる本が読みたくなる。
藤本なほ子さんによる『このようなやり方で300年の人生を生きていく 新版』(キョートット刊、以下『300年』)のプレゼンも、そんな感じだった。
「学校が嫌いでハミ出していった」著者・小川てつオの半生をざっと見ていって、
つまりこの本は、単なる旅行記ではなく、これから「社会」のなかでどのような位置をとり、どのように生きていくのかを考えながら沖縄を歩いた十九歳の著者と、その約十年後に沖縄を再訪し、自分を確かめるようにかつての道のりをなぞっていく三十歳の著者の、「生きていく旅」の記録なのである。
なるほど!
そして、色々な方向からこの本が照らされていく。
文体、見ること(スケッチと似顔絵について)、異邦人性、、、この本を編集していても気づかなかった視点も多く、それにうん、うん言っているうちに、なんだかこの本が立体的に浮かんでくる。とても、魅力的に。
おっ、そことツボを押されたように、本文からの引用もある。
藤本さんのプレゼン文、全文引用したいような素敵なもの。私も今すぐ、『300年』を読みたいと思ったほどに。(編集過程で死ぬほど読んでいるのに‥‥)
『つながる読書』には、読書猿さんと小池陽慈さんとの長めの対談がある。
差別の話から始まり、型(その重要性と自由)についてなど、高度ながら大切な話が続きます。(こちらも、うなずくこと多き)
読んでいて、私が大学の卒論で書いた、詩における「アンジャンブモン」(行またぎ)論とテーマが重なると思いました。それは、荒木瑞穂さんの「空き地論」、吉本隆明さんの「言語にとって美とは何か」などを援用しながら、「型で遊ぶこと」「飛び出し」「余白」などを考察し、リズム論を目指したものでした。型は飛び出しのための発射台だとしていたと思います。(読み返すと赤面するような文章だとは思いますが、しかも、卒業単位が足りず、受理されなかったものなのですが)、改めて世に問いたい!
さて、対談の中では『300年』は、「(型から)外に出る」旅の本として紹介されています。
幸田露伴を引き合いに出し、
読書猿 ……旅を書くという営みは、また次なる旅への始まりなのだと思います。そしてその新たな旅を旅するのは、その旅をしたためた彼らだけではない。
小池 つまりは、彼らの旅を読む、この私たちもまたそこから旅を始めることができるということですね?
Yes!
ただ、てつオさんの旅を「行って帰ってこない旅」とも表現しているのですが、誤読される可能性があるかもと感じました。その旅は、社会から隠遁というわけではないでしょう。行った先にも社会(文化)はあり、そもそもの足元の社会の多様性を知ることにもなり、またその人生では、主体として社会にアプローチせざるをえなかったりもするのです。
『300年』初版のあとがき(2005)で、以下のように書いています。
―――社会とは、人が作っているのだから、隙間やデコボコが常にあるし、一つの社会ではなく無数の社会がある。
ぼくがホームレスとして「ホームレス」と呼ばれる人たちの間に暮らして二年になる。ここも一つの社会である。この今の社会の落ちこぼれたちが作る社会には、可能性がたくさんあると思う。
藤本さんの『300年』のレコメンドに対して、宮崎智之さんのレスが掲載されています。若いときの社会に対する自分自身のありようから書かれている、宮崎さんの文章は心を打つ。
また、僕はある時期(おそらく十九歳頃)から、世界が以前のように美しく見えなくなった感覚を抱いていました。(中略)
『300年』を読んで、あらためて気づいたのは、「日常では、ありとあらゆる何もかもが起こっている」ということです。楽しいことも、つらいことも、切ないことも、すべてが起こっているのが日常です。
問題はそれを感受できるかどうか。小川さんの生き方には、全能感に囚われず、世界をそのままの有り様で感受するヒントが詰まっていました。
以上、おもに『300年』に関わることについて記してきたが、この『つながる読書』はほんとに盛りだくさん。
最後は、草野理恵子さんの文章で終わる。それがすばらしい。そうきたか、という感じに終わる。
『つながる読書』、すごい本ですね!
*
さて、一乗寺の恵文社 に行くと、『つながる読書』ありました! 『300年』の近くに。
そのことを書店員さんに伝えると、
―――届いた『つながる読書』をめくると、『このようなやり方で300年の人生を行きていく』があったので、同じ台に置いてみました
うれしい。
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書店のみなさま、『つながる読書』ブックフェアはいかがでしょう?
熱をもってレコメンドされてる14冊が並ぶのを見てみたい!
その中には『300年』のほか、
大江満雄編『いのちの芽』
金満里『生きることのはじまり』(人々舎さんより再販予定)
といった手に入りにくい本もあるので一層、ブックフェアの価値があると思います。
ジュンク堂西宮店で『つながる読書』フェアとのこと!
小池陽慈さん、読書猿さんや選者の著作も並んでいます。
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