小川てつオ『このようなやり方で300年の人生を生きていく』
19才。
似顔絵屋の看板を背負って沖縄へ。
恋は無し。
おばさん、おじさん、おじい、おばあ、に怒られ、ほめられ、愛される。
ホームレスアーティスト、
小川てつオの原点。
現在改訂版を制作中!(2023年3月15日発行予定)
中を読む 著者の紹介
著者は 「居候ライフ」で注目され、現在公園でホームレス生活をし、そこでカフェを運営している小川てつオ。
19歳の時、やったことのない似顔絵屋しながら沖縄を旅します。
そのときの日記、絵を収録しました。そして、彼は10年後また沖縄を旅します。
あらすじ – 本文から
19才。この時の僕は、全くもって、はばたきたかった。それも、当然のこととして。
「こういうやり方で300年の人生を生きていく」
このような旅行をしていると必ず「若いうちだけだよ。」とか「思い出作りだね。」とかいう言葉をはげましとして言われるのだが、これもあたいは、イヤだ。
旅行をいつまで続けるかとかいう事ではなく、このようなやり方・精神で、三百年の人生を生きていく、そのためのむしろ準備体操のそのまたアキレス腱のばしにすぎない小旅行において、このような言葉は、実に退行的に聞こえる。
こんな旅 – 「じいさんと将棋をさしつつ年を越す」
銭湯で、テントをはれる場所をたずねると、そこへちょうどやって来たおじいさんがいて、その人の家に泊まる事になる。
おじいさん(タクシーの運転手)が、幽霊の話をたくさんしてくれる。また、那覇にも糸満にも首里にも、至る所に「石敢當」 と彫り込んであるのだが、それは、一種の魔除けで「石とたたかえ」(人間とたたかうな)という意味らしい。
老人の定番、戦争の話もたっぷりきく。お礼に似顔絵をかく。
老人、「色が濃すぎる」と不満足そう。
12/30
とおい国から、やってきた
おちゃめなモンキー・ピグミーくん!
くるくるしっぽをまきあげて
ユラユラユラユラ
ブランコあそび
恥ずかしがり屋のピグミーくん
あなたとお話ししたいんだって
と語るピグミー・モンキーの他、家の中に、巨大硬貨や、様々な時計、人形、おもちゃ、写真、工芸品が入り乱れ、ものすごいアナーキーとカオスがうずまいている。
しかし、庭を見た時、私は言葉を失った。ごまんと積み上げられた巨大な廃棄物の間や上を、あひる・にわとり・犬・猫、が動き回っているのだ。
もう一日、泊まる事になる。三〇〇円出せば、お腹いっぱいたべられる沖縄の食堂は、えらいと思う。
銭湯をただにしてもらう。
12/31
糸満市場で、似顔絵描きをやる。人は集まってくるのだが、いざ声をかけると、だれもが断る。恥ずかしいようだ。
結局、一人もかけないまま、むなしく、島袋家に帰る。
じいさんに夕飯をおごってもらう。その後、じいさんと二人で銭湯へ行く。
この銭湯は、深夜になると幽霊が出るため、夜九時までしか営業していない。月に一度は、坊主が来てお経をあげる、ありがたいお湯に一時間入る。
じいさんと将棋をさしつつ年を越す。じいさんに新年のあいさつと誕生日(七六才)の祝言をする。
「また、めしを出してくれる。 とにかく、死を覚悟して食べる。」
「ファンキーとしか表現できないノリで、サトウキビのとりいれを手伝うとおばさんたちに次々と求婚される。」
「似顔絵描きだぁ。世の中甘くみてんじゃねぇか!俺はお前みたいなやつが大嫌いなんだ。」
この沖縄旅行を通してぼくは、社会の肌合いの多様さを感じていた。人の顔が見えてきたのだ。ああ、全く似顔絵とは、人の顔を見るということだ。ぼくが無意識に選んだ「似顔絵」とは僕の社会への踏み出し方だった。
「死の後を生きるということは、続きをつくるということ」
ぼくは、思わず服をぬいで水に入った。冷たくはなかった。少し泳いで、浜にあがって「ドロドロー」と叫んだ。
10年後、てつオはまた沖縄を旅をする。10年前にであった人、変わったこと変わらないこと、時間と死をめぐる旅になる。
それは、10代、20代の若者だけではなく、すべての人のこころにひびく。
装丁
表紙の絵は大阪在住の画家・つき山いくよ。
19歳のてつオをイメージを、折り込みちらしの裏にさらっと描いてくれました。「あまり、上を飛んでない方がてつオさんらしい。」
感想
小川さんの文章はいい、ということは知っていたけど 19歳のときからいいとは知らなかった。
15年前、19歳の小川さんは 似顔絵描きの道具を抱えて一人沖縄へ出発する。テントを張り、出会い、食べ、絵を描き、トラブり、また会い、もらい、あげて、歩く。
ページをめくりながら、 エノアール(代々木公園で暮らす小川さんが運営する屋外カフェ)での今の小川さんの営みそのままが浮かぶ。
住人のおじさんと将棋をさし、おじさんを負かして、お茶を入れ、私と息子の似顔絵を描いてくれた。(やっぱり似てない)同じだーーほんとうに小川さんは 「このようなやり方で300年の人生を生きてい」ってる。
読み終わって、自分のやり方で人生を生きるためには 知恵と信念と愛嬌が大事だなあ、とも思った。家庭でも学校でも教えてくれないから いろんな人がこの本を読むといいなと思う。
大林えり子(ブックギャラリーポポタム)
「このようなやり方で300年の人生を生きていく – あたいのルンルン沖縄一人旅」
A5版 136p 絵たくさん 本体1000円+税
ISBN4-9902637-0-7
“小川てつオ『このようなやり方で300年の人生を生きていく』” に対して1件のコメントがあります。
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以下、旧掲示板にあった、読者からの投稿です。
一度終わりまでピューっと、
面白くて、駆け足で読んでしまいました。
最近、トイレで(失礼!でも、ほんとに好きな本ほど、トイレで読んでしまいます)、1日5分づつ読み返していて、丁度日記1日分位が、1回に読む量になっています。1日1日、人や天気に触っていくかんじで、旅の感じを毎日、この本からもらいます。
昨日は、1/2。太田さんが怒る。中学の先輩・後輩について、私も読みながらその頃の上下関係を思い出してしまった。
今日、1/3。「どうも、気分がすぐれない。でも、来た以上、似顔絵をやらざるえない」、そして似顔絵を9人分描く!
この感じ、気分を押して動いていく感じ、読んでいて力がわいてきました。
これから、夏いっぱい、じっくり読みます。
(気候もぴったり!)
良い本、本当にありがとうございます。
なるほど、トイレっていいですね。
毎朝、トイレで読むと、今日は昨日と違った一日が、始まるって感じがしてよさそう。
私もしてみようかな。
3ヶ月の旅日記を読み終えて、改めて、てつオは行動力のある奴だと思った。
僕ももう一度、沖縄へ行きたく思った。
また時間がある時にでも、読み返してみたい1作だと、ハイ。
・・・さて、みさこ本、制作が行き詰まってるらしいが、大丈夫か?(苦笑・汗)
今、代々木公園のホームレスが、東京都の圧力が強まって今にも追い出されそうな所迄来てるそうなので、恭平、色々こだわるのもいいが、筆者(みさこさん)のように流れに任せて作業したらいいかもな!!!(^0^)/
でわ、楽しみにしてんぞよ★
わたしも何回も読み返している、それでも飽きません。
みさこさんの本、まわりの期待も大きいし、がんばってます。変にこだわるのはよくないかもしれないけど、みんなにホント買って良かったって、感動してもらえるものに仕上げたいです。
青山ブックセンターで2冊取り寄せてもらい
母と各1冊ずつ買いました。
ちょっと話それますが、
西新宿にあるイレギュラーリズムアサイラムって
アナーキーなお店の出してる
「労働廃絶論」ってパンフレット本も
2回目読むときにあわせて読んだので、
余計に人生をもっと好き勝手するぞー!という
希望がたくさん出ました。
その店、ぼくも最近行きました。お店の方が、エノアールに遊びに来たことありました。労働廃絶論ですか、壮絶!ですね。どんな内容なんだろう。ではでは。あの店、ビールが安かったなぁ。
ざっくりしたいい店ですね。
すぐに 買おうと おもった
300年の人生!ええやん!
40才になって、老後のことばかり考えてたけど
せやん!300年いきたらええやんって、思ったら
元気でた!
もちろん 本文もとてもおもしろかったよ
ブログに 一部引用させてもらいました
ご了承ください
未定稿@京都
http://miteikou.exblog.jp/
日常とというものが迫ってきます。そして、食べ物の話、それもおいしそうな、が多いですね。
300年後のさだ子さん、みてみたいです。
みなさん、何月何日の日記が一番好きですか?
わたしは、とりあえず、1月1日にします。島袋じいさんはいいかんじです。
文字も大きくて読みやすく似顔絵もたくさん収録されているので
最後まで飽きさせません。自分の沖縄写生旅行の記憶がよみがえりました。ので、小川氏の画には本当に写実性があると思います
心に残る文章がいくつもありました。とても励まされて久々にテンションがあがりました。
友人知人に配りたいので3冊追加注文しました。
今後も購入したいので増刷し続けてください。お願いします。
本はまだまだあるので心配なさらなくて大丈夫です。キョートット出版としては、この本はロングセラーだと思っているので、キョートット出版のある限り、絶版にはしません!
あらためて、手にとって読んでみると、いい本です。自信をもって勧められるかんじの。
絵がいいというのは、ほんのちょっと意外な反応なのですが、多くの人から言われました。(私も、てつオの絵は好きです。でもあまり言われないと思った。絵の印刷の精度、もう少し、良ければよかったのですが。増刷のの際はそうするようにします。)
著者にはなんというか、表現力というか、きゅっと掴む力があるように思います。どうでしょう。
リーさん、インドの山奥ですか。びっくりです。代々木公園での生活を終えたら、インドにも行ってみよう、(とヨーロッパ)と思っています。その時に訪ねられたらなぁ。
鈴木さん、エノアールにもぜひお早めに。ほんといつまで続けられるか(続けるか)分かりません。
カナヨさん。このラインは命のラインである、という線で行きたいですね。ぎゅっとしてしまうところが詩人です。
恭平へ。昨日ヘノコでヘリポート工事防止のため一年過ごした青年が、やってきました。本を読んで。
今、辺野古はどんなかんじなのでしょう。
ヘリポート基地を海上につくるのを、中止しそうだと思ったら、今度は海岸につくるとかいっている。
春に、辺野古の支援に行っていた人の話を聞く会があり、そこで胸うごかされるような話をききました。一度行きたいのです。
面白そう、と思って読みはじめた本が、想像以上に良い本だということに気づく。タイトルの深さに泣く。エノアールで 会ったてつオさんと、19歳のてつオさんは変わらない(ある意味)。おばさん達から食べ物をもらったりする才能がある、と書いてあったけど、それはてつオ さんがきれいな顔をしているからだと思う。見た目ってすごい。
世界は、営み。
自分がほんとうにやりたいことをやる、それでしか真心に太刀 打ちはできないと思っているけど、それがなかなかできなくて疲れてしまったりする。あの日、私はくらくらするくらい眠かった。途中、目が覚めて「ここはど こ?」となるくらい爆睡した。いろいろなことに疲れた人達に沖縄があったように、私にはエノアールがある。てつオさん、眠る場所を貸してくれてありがと う。あそこがいつかなくなっても、私は木立のすきまに悲しみを、逃がすことができる。
恭平、私の知らないところで着々と完璧に、仕事を進めていたんだね。きれいで良い本なので、たくさんの人に勧めます。300年の人生の層ができて…なるほど私も300年を、生きてよいと言うことなのかな。。。
涙がでます。(この本を作ってよかったということと、たくさんの人とこの本を育てているのだ、ということがわかって。)
Dance and saleとはきょへらしい。
哲夫くんの300年を読んでないのですが、なにしろ、いんどの山奥にこもって長くなりますから。この場をちょいとかりて近況をお伝えします。
よ うやく、こちらで建設していた練習場が完成して、ぼつぼつかつどうをはじめました。ワークショップには各国の人が参加してきます。来週からは長期コースの 舞踏すくーるをかいこうするつもりです。5000m級のヒマラヤが目の前のいいところです。いちどあそびにいらっしゃい。
こちらでサイトをつくりました。ひまなときにどうぞ。
サブボディ・ネット ヒマラヤ: http://subbody.com/
舞踏ブログ「からだの闇を掘る」: http://subbody.exblog.jp
解離性ブログ「行方不明者たちの日記」: http://yukue.exblog.jp
ワールドリゾーム共振掲示板: http://bbs.avi.jp/267930/
「やりたいことをする」(それには、岡本太郎的な、挑む、のようなニュアンスがある)、リーさんにもそういうところをかんじます。
リーさん、たぶん、このてつオの本好きだと思う。読んでほしいなと思うので、送りたいです。
まだ半分しか読んでいませんが、とても面白く、小川さんに興味津々です。
この本の中の1/11の日記での「300年の人世を生きていく~」のくだりの前後の文章には非常に感銘を受けました。
エノアールにもいつか行ってみたいです。
たしかに「自分のしたいことをする、それが他の人へのはげましになる」というような言葉、生きていくにあたって、思い出したりします。
みじかい人生のなかのいのちがけの人生にある
「300年の人生」という言葉が広がっていく感じがします。
実際、この本は、読むにつれ、タイトルにあった、300年の人生というものに層ができて広がっていく感じなのかもしれません。
300年は、おもいのほか、人生を感じる本なのかもしれません。
注(おもいのほかと書いたのはなぜか): 「このようなやりかたで300年の人生を生きていく」、というタイトルは、てつオの当時の日記の中で、編集の きょへが一番印象に残っている言葉からどうだろうと思ったのです。それは、そのときのてつオの気分をあらわしているな、と思ったのです。
一冊の本としてまとまって(10年後の日記もつき)、人生という言葉がしっくりするかんじになったのでしょうか。
本が出てから、いろいろ感想を言っていただいています。それを私は聞いているのだけど、その声はたいてい私にだけ向けられているのではなく、著者 小川てつオ へ、または本の登場人物たちへ、または沖縄へ、または十代の若者といったものへ、……、に向けられている、と感じることが多いです。なので、その声が私のところだけで止まるのは惜しい、と感じていました。
そこで、少々遅くなりましたが、このような感想など交換できる場をつくりました。さまざまな声が広がっていかんことを。このBBSがもりあがらんことを。
(読んでない方の書き込みも大歓迎です。)