ハマれないまま生きていく—— <栗田隆子×小川てつオ>トークイベントに寄せて
Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京・台東区)で、今週末、栗田隆子さんと小川てつオさんの対談イベントが開催されます。
ハマれない「女子」とハマれない「男子」は共闘できるか
——学校空間を逃れ出たふたりが語る〈これまで、今、これから〉
栗田隆子×小川てつオ
日時:2025年6月28日(土)18:30開場/19:00開演
会場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)
参加費:1,000円(会場、オンラインとも)
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小川てつオさんは、『このようなやり方で300年の人生を生きていく』(キョートット出版・素晴らしい装丁は納谷衣美さん)の著者でもあります。この旅行記では、19歳の小川さんが沖縄に飛び込んで、怒られたり、もてなされたりしながら、身をもって自らの「やり方」を見出していくさまが描かれています。小川さんはその後、あちこちの家を巡回して暮らす「居候ライフ」などを始め、他者とのゆるやかな共同性を指向していきました。2003年からは都内の公園で暮らし始め、今日に至っています。
こうした小川さんの「やり方」は、日常/非日常、私有/共有、プライベート/パブリック、などの境界に自らを存在させてみることから始める実験そのもののように見えます。境界を揺さぶって、日常の中に非日常を生み出し、去っていくという、「まれびと」っぽい感じもあったのかなと、昔の小川さんを知らない私は想像します。
そして近年の小川さんは、境界にとどまって少し根を下ろす感じ、その場を育てる感じになっているのかな、と。そこに居ることが生活であり表現である、というような。いま、公園暮らし20年の記録をまとめた小川さんの『ホームレス文化』(8月刊行予定)を編集しながら、小川さんの「やり方」の深まりを感じています。
そんな小川さんが、『ぼそぼそ声のフェミニズム』などの著書で知られる栗田隆子さんと対談します。昨年刊行された栗田さんの『ハマれないまま、生きてます』(創元社/シリーズ「あいだで考える」)の編集者・藤本なほ子さんによる企画で実現の運びとなりました。
栗田さんと小川さんの共通項は、学校に、社会に、「ハマれない」「ハマらない」こと。
私もずいぶん長い間、社会のどんな場所にも「ハマれない」自分にコンプレックスを抱き続け、あがいてきました。離婚や、非正規労働で生計を立てる苦労も経験しています。しかし、昔の私は自分の生きづらさを、ただただ自分に原因があるものとしていました。「ハマれない」ことがバレないように、ハマっているふりをすることに一生懸命でした。10数年前、栗田さんの発信に接し始めて、「働くことがしんどい、って言っていいんだ」と目から鱗が落ちたことを覚えています。私にとって、それは解放の始まりでした。
お二人の対談、楽しみです。「ハマれない」感覚をひそかに抱き、取り残されたような気持ちになっている人がいたら、きっとその心に、何かを届ける対談になるのではないでしょうか。
藤本さんによるこのイベントの案内文は、読むだけで元気がでるような気がします。小さな狼煙が上がっているような、繊細でありながら熱量のある文章は藤本さんならでは。ぜひお読み下さい。(M)
◆ご案内・申し込み(Peatixリンク)
https://readinwritin2506281.peatix.com/view